数次相続が発生している居住不動産について、相続登記をした事例(不動産登記)
1 背景
60代の女性から、夫(第2相続の被相続人)が亡くなり、自宅の不動産の登記を自分に移転したい、というご相談をいただきました。
お聞きすると、自宅の不動産の名義は、亡夫の父(第1相続の被相続人)の名義のままとなっているとのことでした。
司法書士に依頼して進めていたところ、司法書士が戸籍を収集した段階で、「相続が複雑になっているので、弁護士に相談した方が良い。」と言われたとのことで、当事務所に相談に来られました。
そして、第1相続と第2相続について、相続登記と、仮に遺産分割の協議・交渉が必要となった場合には協議・交渉を行うことで、当事務所にご依頼いただくことになりました。
なお、依頼者によると、第1相続において、連絡先が分かっている相続人2名(亡夫のきょうだい)については、自分でお願いして同意を得て、印鑑登録証明書をもらっている、とのことでした。
他方で、第1相続の被相続人の離婚により亡夫とは離れて暮らしていたきょうだい1名と、亡夫の異母きょうだい1名の連絡先が分からないことから、ご自身で対応するのが困難な状況でした。
2 当事務所の活動と結果
当事務所の弁護士は、連絡先の分からなかった相続人2名の所在調査を行いました。
そして、判明した所在先に連絡をして、それぞれの意向確認を行ったところ、いずれも依頼者の意向に応じる旨の回答でした。
また、連絡先が分かっていて印鑑登録証明書をもらっていた相続人2名についても、改めて意向確認を行ったところ、事前にお客様からお聞きしていたとおり、依頼者の意向に応じる旨の回答でした。
そこで、当事務所の弁護士は、登記申請に必要な書類を作成し、相続人全員から必要書類の取り付けを行いました。
そして、自宅の不動産を依頼者の名義とする相続登記を完了しました。
3 所感
相続登記が義務化されたことにより、相続財産に不動産が含まれている場合には、速やかに相続登記をする必要があります。
ここで、相続登記を長年しないままにいた場合、最初の相続の相続人が亡くなることで、第2、第3の相続が発生していることがあります。
このように、最初の相続が開始した後、第1の遺産分割(相続登記)が行われないまま、第2、第3の相続が開始した状況のことを「数次相続」といいます。
数次相続の相続登記では、数次相続に関わる相続人のうち、誰が不動産を相続するかによって、提出する書類の内容や、登記の方法が異なってきます。
本件では、第2相続の相続人である依頼者が不動産を相続する場合でした。
この相続登記においては、第1相続の相続人である亡夫が遺産分割により不動産を相続し、さらに、第2相続の相続人である依頼者が遺産分割により不動産を相続したという2つの遺産分割協議書の提出が必要となります。
登記申請自体は、中間の相続(第1相続)が単独相続の場合には、1件の申請で数次の相続登記をすることが先例において認められています。
本件では、第1相続の相続人である亡夫への相続登記を省略して、第2相続の相続人である依頼者へ直接相続登記をするという、1件の申請で相続登記をすることが可能でした(相続登記2件で申請することもができますが、そうすると、登記費用が2倍かかるため、通常は1件で申請します)。
また、相続登記においては、被相続人の登記簿上の住所と、死亡時の住所が異なる場合、その住所の変遷を、住民票(除票)や戸籍の附票で証明する必要があります。
ここで、相続登記を長年しないままにいた結果、住民票(除票)や戸籍の附票が保存期間切れで取得できない場合があります。
このような場合には、相続人全員から「登記簿上の所有権登記名義人○○は、被相続人○○に間違いありません。」という内容の上申書も取り付けて提出しなければなりません。
本件でも、被相続人の住所の変遷を証明するための住民票(除票)や戸籍の附票が保存期間切れで取得できなかったころから、全ての相続人から上申書を取得することで、相続登記を進めることができました。
なお、所有権に関する被相続人名義の登記済証があれば、上申書の提出は不要となりますが、相続登記を長年しないままに経過していると、この登記済証も紛失している場合が多いです(本件でもそうでした)。
以上のように、本件では、相続登記を長年しないままにいたことで、登記申請が複雑化した面がありましたが、当事務所で適切に対応したことで、スムーズに相続登記を完了することができました。
4 お客様の声
(担当スタッフ)さんには大変お世話になりました。
いつも沈着冷静という感じでしたが、話が長くなると普通の若い女性らしい面が出て、そこがまた安心感を抱かせることにつながりました。
ありがとうございました。