相続の紛争が起きるリスクのある状況と対策
相続が発生するとき、相続財産の分配について、相続人同士で話し合いによる合意ができる場合には、その合意に従って相続財産が分配されることになります。
これを遺産分割協議といいます。
相続人間でこの相続財産の分配について話がまとまらず、遺産分割協議ができない事例としては、いくつか類型化することができます。
本コラムでは、このように遺産分割協議がまとまらず、相続の紛争が起きる事例についてご紹介いたします。
1 家族関係が複雑な場合
疎遠な相続人がいる場合には、話し合いによる分割が困難なときがあります。
たとえば、父親には離婚歴があり、前妻との間に子1人がいて、現在の妻との間にも1人の子がいる事例について考えます。
この事例で父親が亡くなったとき、相続人は現在の妻とその子、さらに前妻との間の子も相続人となります。
前妻との間の子と連絡がつかず疎遠になっているときや、遠方に住んでいる等の事情により、仮に連絡がついたとしても分割の交渉に不便な場合があります。
このように、疎遠な相続人がいるときには、まずは相続人の所在や連絡先を調査することから始まるため、遺産分割協議が難航する可能性があります。
2 相続財産に占める不動産の割合が多い場合
相続財産には預貯金や現金、株式など様々なものが考えられますが、相続財産に占める不動産の割合が多い場合には、話し合いがまとまらないことがあります。
たとえば、母親がその配偶者である夫から相続した土地建物に住んでいて、母親には子が2人おり、子のうち1人はその配偶者と一緒に母親と同居しているとします。
残り1人の子は実家から離れた遠方の地域に居住しているとします。
このような事例で母親が死亡したとき、母親と同居していた子は配偶者と一緒に住み慣れた土地建物で今後も生活していくことを希望すると考えられます。
一方で、遠方に住むもう1人の子についても相続権があることから、土地建物について相続分を主張してきた場合には、土地建物の売却をするなどして代償金を遠方の相続人に対して支払う必要が生じる可能性があります。
土地建物の売却はとても面倒な手続きです。
このように、一部の相続人が遠方に居住している場合において、相続財産に居住用の不動産が含まれているときには、複雑な問題が生じる可能性があります。
3 子のいない夫婦の場合
夫婦に子がいないときには、配偶者の一方がなくなったとき、残された配偶者が相続人となることに加え、亡くなった配偶者の両親が健在のときには両親が、両親やその祖父母がすでに亡くなっているときには、亡くなった配偶者の兄弟姉妹が相続人となります。
兄弟姉妹は成人して遠方に居住していることが多く、連絡がつかないこともあります。
残された配偶者が義理の実家と円満な関係を築いていれば、話し合いは円滑に進むことになるでしょう。
しかし、関係がうまくいっていない場合には、残された配偶者は義妹や義兄を相手に遺産分割の交渉を行うことになり、大きな負担となります。
4 その他よくトラブルとなるケースについて
その他、遺産分割でよくトラブルとなるケースについては、寄与分や特別受益を主張する相続人がいる場合があります。
寄与分とは、相続人に相続財産の増加や維持に貢献した者がいる場合に、その者に相続財産を多く取得させるという法律上の制度です。
特別受益とは、相続人に生前贈与等の相続分の前渡しがある場合に、その分については相続人の取り分を減らすという法律上の制度です。
この寄与分や特別受益が主張される事例においては、いずれも金額の確定に困難を伴うことが多く、遺産分割の交渉が長期化する事例が多くあります。
これ以外に、相続でよくトラブルとなるケースは、隠し子の存在等、想定外の相続人が出現するという事例があります。
5 相続トラブルを防ぐための対策について
このような相続トラブルを未然に防止するためには、遺言書を作成しておくことが有効です。
法定の要件に従って作成される限り、遺言書は有効であり、故人の遺志を示すものとして、法定相続分に優先して遺産が配分されることになります。
また、相続トラブルを防ぐためには、先ほど述べた代償分割という手段もあります。
この代償分割というものは、法定相続分を超えて相続財産を取得した相続人が、金銭でその超過分を他の相続人の不足分を補填するというもので、相続人間の実質的公平を図るため、遺産分割の場面では比較的よく利用される手法です。
たとえば、相続人が子2人、相続財産が土地(価格3000万円)、金融資産として2000万円あるという事例を考えます。
この事例において、相続人の1人が土地をすべて取得し、金融資産をもう1人の相続人が取得することになると、土地を取得した相続人は、法定相続分である2500万円よりも500万円多く取得していることになります。
そこで、土地を取得した相続人が、もう1人の相続人に対して500万円を現金で支払うというものが代償分割となります。
6 遺産分割でお困りの場合には、弁護士にご相談ください
このように、遺産分割には問題を複雑化させる要因が多くあります。
弁護士であれば、このような複雑な相続問題を円滑に解決することができます。
当事務所の弁護士は、遺産分割について豊富な経験と解決実績を持っておりますので、遺産分割についてお困りの方は、ぜひ当事務所までご相談ください。